twister

ぽんこつペイントやったんだけどちょっとパニックになったから書くね

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この絵、何を描いたかわかりますか?

 

先に発表しておくと、答えは「夏」だった。

回答者の僕は「夏」と答えれば正解となる。はずだった。

 

これはぽんこつペイントというゲームだ。1行でルールを説明すると、

丸(正円)と直線だけでお題の絵を描き、お題を知らない回答者に当ててもらうというもの。

例えば画像の状態なら、丸と直線だけでポニーテールを描くのだ。

戦略性として、「画数が少ない方が先に絵を発表出来る」というルールがあり、精巧に書き込んでしまうと発表権がなかなか得られない。

この絵はまあまあわかりやすいが、17画使ってしまっているので発表順は後の方になってしまうだろう。もし先に他の人の絵で正解されてしまうと、この絵は発表の機会すらもらえない。

だからと言ってシンプルすぎる絵だと当ててもらうのが難しい。実際に僕が描いたものだが、

まあ、たしかにこれをポニーテールだと言い張るのは無理があったな。強気の4画。

いかに少ない画数で、でも理解できるように、そんなギリギリで伝わる絵を描く感じが楽しいゲームだ。

やってみると直線と円しか描けないという縛りから、絵のうまさはあまり関係なくて、年齢や性別を選ばずに誰でも遊べる。

極限まで削ぎ落とした結果思わず笑ってしまうような「名画」も毎回のように生まれるので、いつしかお気に入りになっていた。

 

 

ある日友人たちと4人でゴルフに行き、宿泊先でこのゲームをやってみた。

それぞれ個性が出て面白く、爆笑も起きる。

いいゲームだと思ってやっていた時、順番が巡って僕が回答者となった。

 

僕は目をつぶり、3人はお題を確認する。もう1度書いておくが、答えは「夏」だった。

 

画数が少ない順に発表出来るので、まず絵を描き終わった全員が画数を発表する。

 

曽田「17画」

西村「うわ、俺24画だわ、描きすぎたかも」

稲田「うわまじかー!じゃあ俺一番最後だわ」

 

曽田「よし、じゃあ俺からだな、当ててくれ」

そしてその一枚目がこちらだったのだ。

既に答えを伝えているので、「夏だろ」と思うかもしれないが、何の情報もなくいきなりこの絵を見せられても結構わからないものだった。

「上に太陽、下にあるのはおそらくスイカか……? スイカなのか……?」くらいしかわからない。

わざわざ画数を使ってこのジグザグした感じを描いているのだからスイカだろうとは思うけども。

僕の感の鈍さもあるのだが、「下のスイカの出来に自信が無いから、太陽を描いたのか……?」という判断になり、

 

「……スイカ?」

「違います」

こうなった。ごめん。

 

 

西村「よしよしよし、それはいい流れだ」

そして2枚目だ。

おんなじよーな絵が出てきた。

2枚目は、1枚目も加味してヒントとなる。なのでかなり絞り込めた。

「……どっちだ?」

おそらく、「海」か「夏」だろうと判断できた。スイカ割りなら棒を描くだろうし、砂浜なら違う描き方をする気がする。なので……

海パンをわざわざ書いたってことは、海か……?

 

「えー……海!」

「あー違います!」

 

外してしまった。

でもほぼ次で当てれるはずだ。多分、「夏」だろう。

 

稲田「俺めっちゃ描き込んだから!当ててもらえると思う!」

こいつゲームの主旨わかってんのかなと不安になったが、まあでもいい、詳細に描いてくれたのなら絶対に当てられるはずだ。

当てれないと俺にもポイントが入らないから当てることが大切なんだ。

 

「いいぞ、来い!」

「いくぞ!たのむ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!?

 

 

スイカじゃん

 

 

1枚目でスイカと回答している。そしてそれは間違いだった。その状況で、でっかいスイカの絵が出てきた。

パニックになった。なぜだ?なんでだ?スイカにしか見えないぞ?スイカじゃないのにスイカ?なに?ペンの太さを利用して直線で色を塗ったの?画数の少なさを競うゲームでなんでこんな大胆な筆使いが出来る?スイカごときに76画も使っておきながらなんでさっき「うわまじかー!」とか言えたんだ?ツルの部分で画数を抑えるちょっと小洒落たテクニック使えてるのになんで?

全然わからない。友人2人も爆笑していることから相当ズレていることだけがわかる。

 

「え?……え?」

先の2名の絵でほぼ「夏」に絞り込めたのに、急に世界が広がっていってしまう。

この絵は間違いなくスイカ、でも答えはスイカじゃない。そういう哲学のようだ。

 

「おいおい当ててくれよなー!」

えっなんでお前が俺を煽れるんだ?17画の奴より情報量が少ないんだぞ?

 

思考は、堂々としたスイカから逃れることが出来なかった。絞り込んでいたはずの考えも全て飛んだ。

脳内でどれだけ頑張って違う答えを想像しても、目を開けば大きなスイカがそこにある。

もう友人たちの姿も見えない。僕と、スイカの二人きりの対話。進んだ針を戻していくような時間。

次第に、このスイカをぶっ壊したくなっていた。囚われるあまりに、憎しみすら覚える。スイカも、壊せ!と叫んでいるようだった。赤く飛散する果実。

 

 

「スイカ、割り……」

 

 

間違いだと言われ、ゲームは終了した。

間違っているのは俺だったんだろうか。

76画のあなたが、少しだけ悲しい顔をした気がした。

 

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