コンビニで、少し変わった味の新発売カップ麺を見ると思い出す話がある。
サラリーマンだった頃、昼食はコンビニで買うことが多かった。
もちろん会社周りにに飲食店も沢山あったのだが、毎食となると値段もかさむ。
コンビニのものが結構旨いということもあり、昼食がコンビニの比率は高かった。
さすがに毎日のように行っていると、ある現象に悩まされる。
「食べたいものがない」
これ。これに尽きる。
あんなに沢山の商品があるのに、その中のどれにも食指が動かない。
「カップ麺どれも食い飽きたな……」
「パスタって気分じゃないな……」
「うわ弁当ロクなのねえわ」
「パスタサラダ……?」
「おにぎりもパッとしねえな」
「パンは夜まで持たないしな」
そんな感じで、気が狂って何故かチーズかまぼことかを昼食として食べる日々だった。
ある日、コンビニで部下のイカれ浜田と出くわした。
浜田は熱心にカップラーメンの棚を見ていた
「見て下さい! こんなの出てますよ!」
そこには、見慣れぬカップ麺が2つあった。
どん兵衛、カルボナーラうどん味
と
カップヌードル 抹茶シーフード味だ。
「まずそうだな」
「マキヤさんどっちにしますか?」
「なんでどっちかなんだよ」
「先に選んでいいですよ」
特に食べたいものも無かったので、せめてマシそうなカルボナーラうどんを選択した。
浜田は「じゃあ僕はこっちですね」と、ポケモンのシゲルのように抹茶シーフードヌードルを取った。
2人で会社に戻り、アヘン窟の如く人で溢れた会議室(食事を摂っていい場所)で並んで変なカップ麺を食べることに。
「どんな味か気になりますね」
「確かに」
「普通だったらショックですね」
「それならそれでいいよ」
熱湯を入れてからの待機時間が、僕はうどんなので5分待たなきゃいけないのに対し、浜田は3分だった。
「すみません、先頂いていいですか」
「伸びちゃうから早く食べな」
「それでは……」
蓋を開けると、抹茶だからか、緑色のキモい麺とスープが現れた。
「うわ、マズそ」
「いやいやいや、意外と、意外と有りかもですよ」
「よかったそっちにしないで」
そして浜田は、緑色の麺を1口すすり、こう言った。
「本当だ! カルボナーラの味がする!」
いやそっちじゃないよ。お前は抹茶の方だよ。
カルボうどんはまだ蓋すら空いてないよ。
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