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サボりカイザー決定戦

 

「誰が1番サボることが出来るか、決めようじゃないか」

 

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僕は大学生時代ずっと、食べ物を3輪の原付で配達するバイトをしていた

 

バイトの女子高生が作り、バイトの大学生たちが配達をする。そんな感じで店が回っていた

配達中は実に自由な時間で、元々1人が好きなので、ただ走っていればいいこのバイトはすごく楽だった。
1050円と、千葉の田舎にしては高時給で、人間関係も非常によく、楽しく働いていた

そしてこのバイトは、慣れてくると、めちゃくちゃサボれる事に気づく。最初は道を覚えるのに一苦労だが、慣れれば信号や渋滞の無い裏道を駆使し、普通かかるとされる時間より遥かに早く届ける事が可能になる

店長「ここいって、ここ寄って、もう1つ寄って、帰って、 1時間以内で頼む!」
僕「1時間っすか、、、頑張ります!(40分で終わる)」 ブーン

このように生み出した20分のフリータイムを存分にソシャゲに充てていた

「仕事を最大限効率化し、自分の休み時間を作る」

この動きは、社会人になった今でも存分に生きている

 

とにかくそんなバイトだったので、このようなサボりは横行していたが、配達時間を守るプライドはみんな謎にあるので、店はちゃんと回っており、全員、いかに早く届けて、後の時間をゆっくり過ごすか,それだけを考えていた

そしてついに、バイトリーダー、大芝が僕らを集めた
残暑が厳しい9月のことだった

「サボりの王を決める大会をしよう」

よくわかってない僕らに芝崎はルールを説明していく

・派手にサボったやつが勝ち
・店長に帰りが遅いと言われたら負け
・配達に遅れを出したら負け
・一番ダサかったやつが夕飯おごり

面白そうだが、派手にサボるって、なんだろう

ごちゃごちゃ考えていたが、各々ドライバーたちは己のサボり技術に自信を持っていた為、全員が参戦することとなった

もう1度言うがこれで店は回っていた。なんなら地区賞みたいなのも取った。こういう職場が、就活の時からずっと理想である

 

そして、夕方になり、試合開始――

 

とはいえ、どうしていいかわからない
ちょっと長めに休憩をしてみたが、多分派手ではない
そんな中、すごく爽やかな雰囲気で、大芝が店に帰ってきた

 

 

「いやー、配達帰り、シャワー浴びて来ちゃったよ。
僕の優勝でいいかな?」

 

 

そういうことか!!!!!!

 

全員の闘志に火が点いた
やるからには負ける訳にはいかない
俺が一番、サボるんだ――!!

 

そして続々と、配達にいった猛者たちが
それぞれ武勇伝を引っさげて戻ってくる

 

 

「配達帰り、コンビニでうどんを買った。あたために3分かかるやつだ」

「配達途中に牛丼を食べてきた。これは証拠のレシートだ」

「このバイクでドライブスルーをしてきたぜ」

 

さすが1年以上サボってきた連中だ。皆戦闘力が高い、
自分の「家で水筒の水をポカリに変えてきた」が言い出し辛い
あのバイクで家に戻るの結構勇気がいるのに
困っていたところ、サイコパス吉崎が口を開く

「なんつーか……皆さんまだまだですね」

 

 

 

これには先輩ドライバーたちも殺気立つ

「ああん?」
「じゃあてめーは何して来たんだ?」

ふっと笑い、吉崎は言った

 

 

 

 

 

 

「僕は、家でベースを弾いてきました。しかも、天体観測です

 

 

それは、なんか、違く、ないか?

 

他の連中にも当然不評で

 

「すげえズレてる」
「しかもの意味がわからない」
「自分で時間調整出来るからレベルは低い」
「ベースの練習曲じゃねえか」

 

フルボッコにされてました

 

閉店が近くなり、「誰が優勝なのか」「とりあえずベース弾いてきたやつが負けってことでいいのか」議論をしながら皿洗いをしていると、

最後の配達中のはずの大芝から、メールが皆に届いた

 

「やっぱり泡風呂は最高だね」

泡まみれで笑顔の大芝の自撮りも添付されていた

 

 

「勝てる気がしない」
「さっきシャワー浴びたばかりじゃねえかアイツ」
「アイツこれの為に仕込んでたの?」

全員が戦意を喪失し、やっぱりバイトリーダーは強いなということになった

大芝が優勝だ……あいつはレベルが違った

 

完敗だ……いつかまた、機会があれば戦いたい……!
21時00分

閉 店

 

 

 

 

 

21時25分

せっけんの匂いを撒き散らしながら大芝が帰ってきた

引くくらい店長に怒られてた

 

 

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