未来の旅
友人の手塚と共に後輩の吉崎が住む広島へ旅行に行くはずだったが、鬼怒川で山登りをしないといけない仕事が入ってしまい行けなかった。
仕事とは言え、旅行と言えば旅行だ。温泉は本気で最高だった。けれど旅程などはかなり指定されていたので、次はもう少し自由な、仕事じゃない旅行に行きたいなと思った。
鬼怒川から帰宅した夜、手塚からグループのビデオ通話がかかってきた。
手塚「仕事おつかれー」
吉崎「あっマキヤさんだ! お久しぶりです!」
手塚と吉崎という友人2名はテラスのような場所で酒を酌み交わしているようで、日が落ちた歓楽街の熱気が伝わるようだった。
吉崎は広島に住んで貯金を食い潰しながらインスタグラマーをしており、2年前に手塚と2人で会いに行ったことがある。
「久しぶりー行けなくてごめん」
「仕方ないよ、山登りはどうだった? 危険そうな山だったけど」
「死にました?」
「死んでないけど2回くらいレイプされた」
「そうだとしたらその件で電話をかけてくるべきだろ」
くだらない話をしながら適当に近況報告をしていた時、意外な事を言われた。
「そうだ、俺来月くらいから吉崎と住むことにした」
「え? すごいな」
「しかも家賃払わなくていいんですよ!」
「払ってよ」
「広島は?」
「もう引っ越します! 貯金無くなったんで実家帰ろうと思ったんですけど気まずいんで手塚さんち住みます!」
「そんな感じになった」
「すごいな、よく許したなそれを。でも手塚の部屋1Kだから狭くない……?」
「まあ吉崎の仕事が見つかるまでくらいならいいかなって」
「見つからないですよ!」
「絶対探せよ」
「でも楽しそうだね、遊びいくよ」
「いつでも来てください!」
「俺のセリフだ、でも来て来て」
2年前、「広島でインスタグラマーになります!」と言って超凄い会社を辞めて、2年経ってフォロワー120くらいなの見て涙が出そうになったけれど、吉崎がこっちに帰ってくるのは少しうれしかった。
手塚の部屋は1部屋だけれどまあまあ広くてお洒落だから、お互いにそこまで窮屈な思いもしなさそうだ。
「写真は続けるの?」
「あ、写真は辞めて、絵を売って暮らします」
「絵? やってたっけ?」
「最近始めました! マキヤさん買ってください3万で」
「たっけえな最近始めた奴の絵」
「俺もそんな感じで売りつけられそうになった」
「売れたことあるの?」
「お母さんが7000円で買ってくれました」
「よかったね」
その時、トーク画面に画像が送られてきた
「これ! 新作です!」
「うわ」
「タイトル当ててください!」
「シャブ」
「違いますよ! 『ひと』です」
「絵とタイトルのパンチの差よ。でも最近始めたにしては上手いね」
「一週間かけて描いたので3万です」
「労力分を回収しようとしないで」
吉崎は文章も写真も絵も音楽もやる。そして天才だから有名大学を出て何故か国の機関みたいなとこで働いてたけど今の自由な生活の方が合ってると思う。存在が国の為にはならないから。
こういう活動は専業だと厳しいというのは僕も身に沁みてわかっているので、少しでも働きながら無理なく続けてくれればいいなと思った。手塚も彼の能力とやりたい事がわかってるので、わりと快く1Kの部屋にタダで住まわせることにしたんだろう。
「住んでトラブルとか起きないといいね」
「1個、懸念点はある。だから1つだけルールを作る」
「え? なんですか?」
「俺はオナニーを見られたくない。見たら5000円な、罰金」
「え?」
「俺も見てしまったら3000円払う」
「不平等じゃないですか!」
「俺が家賃全部払うんだからそれくらい譲れよ!」
「本来払わなくていい金だしね」
「これ本気でいいアイデアだと思うんだよね。別に金が目的じゃなくて、『少しだけ、そのくらいの気を使って生活してほしい』のよ。完全に自由に振る舞われるとイライラしそうだから」
「なるほどね」
「別に俺も見られないようにするよ」
「わかりました。家にデカい貯金箱あるんで、それ持ってきて置きますよ」
「いらねえよ」
「僕毛筆も勉強してたので、上手にオナニーって書けますよ!」
「そんな箱を俺の部屋に置くな」
「想像したら笑っちゃう。見ちゃったらそれに入れる感じね」
「そうですね……それで、その箱に、
お金が溜まったら、3人で旅行に行きましょう!」
どんな積み立て方してんだよ。
気まずいなそれ。誘われたら「あ、めっちゃ見られたんだ」ってなっちゃう。
「絶対ヤダそんな旅行まじでヤダ」
「また3人で旅行いきたいなー」
「旅行は行きたいけども」
「箱にお金が溜まってきて、『あと5000円くらいで旅行いけそうだな』ってなったら、僕、わざと見に行っちゃうかもしれないです」
「やめろよ最悪じゃねえかなんでこのアイデアがマイナスに作用するんだよそれなら普通に5000円払えよなんでワンクッション俺のオナニー挟むんだよ」
頬が引きつるくらいに笑ったところで、店員さんが2人に閉店を告げる。
じゃあまたねと電話を切り、PCに向かい、鬼怒川の記事を進めた。
どうしてか、普段より集中できた。
旅行は年内に行けたらいいな。
GWはずっと遊んだり頂いた仕事の打ち合わせをしたりしていました。クビになってるのでずっとGWです。GW終わった瞬間友達が仕事とかよくわからんこと言って遊んでくれなくなりました。
あとインスタグラムをはじめました。インスタやってる人の気持ちが知りたくて。
https://www.instagram.com/makiyamakiya/
あとお金がわりと無いのでいつでも大金とか振り込んでください
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Comment
マキヤさんのブログにコメントするの久しぶりで緊張します
めちゃくちゃ楽しそうで何よりです欲の数だけ余裕を持った旅行できそうですね、あと絵けっこう好きです・・・!
2回ぐらいレイプされてるのが気になりますが山登り記事楽しみにしてます・・・!!
お久しぶりです…!ありがとうございます
絵、買います?いいですよ?紹介しましょうか?
山登り記事早く出したい…
いつも楽しく拝見しています。
吉崎さんと手塚さんのキャラもあると思うんですが、
マキヤさんの書く会話文が好きです!
生きるのしんど…って思った時に思い出しにやにやしてます!
これから出る記事も楽しみにしてます。
会話劇が僕も一番書いてて好きです
会話だけで話を進めて状態をわからせるのはドラマ脚本で培った技術ですね…
ありがとうございます!
吉崎さんめちゃくちゃ好きです!マキヤさんはもっと好きです!!
ありがとうございます!吉崎さんはほどほどにしてマキヤさんだけに!
毎度楽しく読ませていただいてます。
相変わらずのファンキーな交友関係で安心しました。
マキヤさんたちがこの貯金システムでいつ旅行に行くのか、微妙な気持ちで見守ってますね…
ありがとうございます
友達ファンキーなのしか残ってない気がする
はい、3人で旅行とか行きだしたら察してください
他人と暮らすってほんと気遣い大事!!
嫁と姑とかほんと、ほんと……………
ところでマキヤさんの周りに普通の人っておられるんでしょうか?
惹きつけ力がとんでもない。
ね、ちゃんと気を使って生きていきたいね…
普通の人と過ごす意味って無くない?
僕含めてみんな狂ってるから引き出してるだけ…
ある日、いつも無視していたオモコロの文字そばを読んでみようと思って
まとめて読んだのですが、マキヤさんの文字そばだけすごくおもしろかったです。
そこからファンです!経済的に1円も振り込めませんが応援してます!
マキヤさんのだけ!最高。いつまでもその素敵な感性でいてください
これからも頑張ります
読んでくださる方がいてこそのものですので、読んで頂けるだけで最高です。あわよくば拡散してくれると超最高です。
いつも楽しく見させて頂いております!
マキヤさんもマキヤさんの文章も超好きです。書かれた記事全部読みました。好きです。
夢はマキヤさんのほしいものリストで一番高いものを購入するのと自分のために記事を書いてもらうこと(∞円で)です。お金貯めるので待ってて下さい!
ありがとうございます!全部!すごい!最高!
ほしいものリストは気にしないでください!そんな!申し訳ない!
白菜キムチさんの為の記事のご依頼は相場の範疇で普通に受けます!
初めまして、いつも楽しく拝見しています…!
マキヤさんの文章の空気感とか人柄とかが物凄く好きで、どの記事やツイートも何度も読ませて頂いています。マキヤさんの新記事やツイートが出るのが1番幸せなときです、いいね50000回くらい押したい。
あと吉崎さんの絵めちゃめちゃ好きです。
マキヤさんの描いたフミちゃんの絵も好きです。私も描いて欲しい
初めまして、コメント超ありがとうございます。
人柄が好き!最高
イイネ50000回押されたい、ジョミしか押されたこと無い
isdさんは美的センスがとても優れてますね、描きますよ
おもしろい記事書いている人はたくさんいますが、マキヤさんの文章が25年間生きてきて一番好みでおもしろいです。全部記事読ませてもらいましたが、もれなく笑いました。
これからもいろんな記事楽しみにしています。
ところで関西でイベント等をやる予定はないのでしょうか?
平日でも有給とってかけつけますのでぜひお願いします!
最近はその言葉が一番嬉しいです。ありがとうございます
これからも一番で居続けられるようがんばります
関西!?
僕が主催してなにかするということはないですが、所属しているメディアのイベントが関西で行われてそれに呼ばれたりしたらなんかあるかもしれません、その可能性は3%くらい!