最も仕事が出来ない部下を手に入れるまで

      2017/04/23

 

とても大事な取引先への謝罪の為、和歌山に向かっています
ただじゃおかれないそうなのでブルブルしてます

新幹線が暇なので、事の発端をここに記します

 

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浜田という奴が僕の部下になった

彼はあまりに仕事が出来ないので、他社から送り込まれた工作員だと言われてた

ある日、浜田は、お得意先に見積もりをFAXで送ろうとした
浜田は、あろうことかお得意先の携帯電話番号をFAX機に入力し、
メモリ送信という、エラーなどで送信できなかった場合自動的に5分後に再送信される機能を使って送信した
携帯にFAXが送れるわけがないので、当然エラーになる

結果、お得意先の携帯には出ると
「ピーーーーガガガガガーピャーー」
とFAX音が流れる着信5分おきに入る形となった
だいたい10時間くらいそんな状態だったらしい

取引先は普段は気のいいおっちゃんみたいな人なんだが、謝罪の連絡をしたら何かヤクザみたいな感じになって死ぬほど怒られて、冒頭のような事態になった

 

 

何で、こうなってしまった

原因はどこにあったんだ

ああそうだ、全てはあの日のドラフト会議からだった――

 ある日、部下が懲戒解雇で突然消えたので、僕は新たなメンバーを補充する必要が生じた
基本的には人事部が適正を見て振り分けるんだが、
現場の判断も取り入れる方針なのか何なのか
人事部がある程度選出した後、NEW部下が欲しい人たちで誰にするか取りあう、
ドラフト会議みたいなのが行われる
今回同じタイミングで補充を望んだのは3人

 

・まず、部下が急に消えた僕

・2人目は、昇進によりついに念願の部下が付くということでテンションが上がったのか、
「秘密をはじめよう」という、社内で女の子とエロい事をする漫画を買った益荒男、中山

・そして3人目、入社2ヶ月目の部下とデキ婚した風雲児、柳瀬先輩

 

 

ミーティングルームに集まり、とりあえず談笑していると柳瀬は

 

「いやーマキヤのところもそうだけど、急に部下がいなくなるとマジキツいよなー」

 

とか言ってきた
いやお前は自業自得じゃないかと思いながら、PCを開く

人事部から送られてきたリストには3名のプロフィールみたいなものが載っている
※印は僕の主観

 

・Aさん♀ 23歳 在籍:経理部
面談にて、本人が営業部への転向を希望
明るく、真面目
※結構かわいい

・Bさん♂  26歳 在籍:営業部
今の場所で結果を出せていない為、新たな環境へ異動
指示を待つ傾向有
※いつも何か食べてる
すごく太っている

・Cさん♂ 34歳 派遣社員
営業歴:12年
※派遣社員の為 詳細不明

 

ふむ

 

Bは嫌いだから選外として
Aさんみたいな素直な新人を1から育てる楽しさというのは確かにある

しかし僕のところは純粋に戦力だった人が欠けてしまったので、正直、即戦力が欲しい。
なので、どんな人間かは知らないのでその不安はありますが、
Cさんの営業歴12年というたくましい数字に惹かれるところがあった

ただ会社、仕事、と言う大きな建前がある以上、
「じゃあ俺Cさんで!」とすぐいくわけにも行かず、
形式的な話し合いを持ってうまく寄せていって獲得するわけなのですが、

これはまあ、ブラインドかかってAさんしか見えていない2人も同じことで
日本人の美徳なのか、悪徳なのか、わかりませんが、いかにロジックを崩さず、
正当性を持って、自分の思い通りの結果を得るかという戦が行われることとなります

 

「いやー正直、3人とも良いですよねー」

中山が心にも無いことを言う

 

「そうだなー」

pepper君よりも感情の無い声で柳瀬も同調する

 

2人は絶対確実に1000%Aさん獲得の事しか考えて無いんだけど、
別にそんなことないですよみたいな感じを出してくる

そしてここから、日本人の悪い部分を抽出したような、低次元の心理戦が今始まる

 

まずは先制、柳瀬がジャブを仕掛ける

「まあでも、 中山君のところはここからメンバー揃えて立ち上げていくって感じだから、最初は経験者の方がいいんじゃない?」

これに中山も応戦する

「そうですねー、でも、逆に今立ち上げたばかりでそこまで仕事なくてまあ、自分が頑張れば回るんで、この時期に新人さん育てるのって有りだと思うんですよね」

「あ、そう?でもうちも新人さん引き受けるくらい余裕あるし、まあ経験者いても助かるから、いや、ほんとどっちでもいいんだけどねー」

お前さっきマジキツいとか言ってたじゃねえか
一時膠着となり、僕に矢が向く

「マキヤさんはどうなんですか?」

「んー今は、新人より即戦力がほしいっすね」

柳瀬が身を乗り出す

「あ、そうなの!?そういう感じ!?」

どういう感じだよ

二人の思考はダダ漏れ状態なので、
僕が軽く攻撃を仕掛けることにした

 

「なのでー、出来たらどちらかがAさん引き受けてくれると僕は助かるんですよねー」

 

2人がガッツポーズをした気がした

 

「そうなんだ、んーまあ、そこまで言うなら」

そこまでは言ってない

 

「まあ、俺のところ余裕あるから、俺も本当は即戦力がほしいけど、
 別に、そこはマキヤ君に譲るよ」

「なるほどですね、マキヤさんのところ大変ですもんね、
 僕は本当に誰でもいいんで、そこは全然、先輩に譲りますよ」

 

俺がこいつらの理想通りに動いてるはずなのに妙に上からくるので笑ってしまいそうになったが
とりあえず俺が敵じゃないことは認識させることができた

 

さて、あとはCさんの獲得に動くわけだが、
即戦力って意味だとBも別に成績的にそんなに悪いわけではない
ただBは評判がよくないしとても太っているので、多分みんなあまり欲してない

2人がAさんを希望している時点で、俺がCさんを取る方法はあるはずで、
獲得するためには、Aさんの行き先が確定するまでに、決めないといけない
そうしないと柳瀬あたりがゴネる可能性がある

ただ、すぐ「こうやって決めましょう!」みたいなのを僕がいきなりいうのは美味しくない
場が膠着して、2人が面倒になってきたあたりで入れるべきだ

そんなことを考えてたら

 

「もう、じゃんけんで決めます?」

まずい、バカ中山が暴走を始めた

「それも有りかもなー」

くそ、柳瀬、同調するな

「まあせっかくミーティングしてるんで、それはどーしても決まらなかったらにしましょう」

なんとか治め、欲望渦巻く会議を進行させる

 

「いや俺は誰でもいいんだけどねー まあでも今、部署に華が無い部分あるしなー」

 

「僕もほんと、人をいただけるだけで有り難いので。
まあでも、男女比的に、男2人の部署はバランスが悪い気が少しー」

 

2人の表現がストレートになってきた
勝負を急ごうとしてる

まだ早い、もっと無駄な議論をしていてくれ

 

カリカリ……

カリカリ……

ん……? 何の音だ……?

 

まずい!!中山があみだくじみたいなのを作り始めた!意味が分からない!

思ったより早い、
もう少し、もう少し話し合いを…

「皆さん二本ずつ線を書き足してください!」

 

やらねえよあみだくじ!

いいんだよそんな公平性とか!

 

ピリリリリ  ピリリリリ

待ちに待っていた携帯のアラームが鳴る

「もしもし、はい、今人事ミーティングで、はい、中山と柳瀬さんもいます」

どこにも繋がっていない受話器に話しながら、会議室の外に近づく、

 

「はい、伝えます、柳瀬さん、○○課長が呼んでます」

「え、なんだろ」

僕と共に会議室の外に出る柳瀬

扉が閉まる

 

「嘘です」

「え?」

「柳瀬さんがAさん獲得するの協力するんで、僕がCさん獲得するの協力してください」

「いやーでも俺、そんなに、Aさん、まあみんな良い人材だと思ってるし」

「僕の前なんでそれやらなくていいですよ」

「絶対Aさんがいい。どんな手を使っても」

「そうしましょう」

「で、でも、どうやって、中山に報告出されたらあれだから無理やりには出来ないぞ」

「第一希望を聞いて、それ被らなければ獲得って提案をするので、その案に賛同してください。
で、多分二人がAさん被るんで、柳瀬さんが有利になるように僕も援護射撃します
それでも決まらなければ、くじにします。あみだじゃなくて、折りたたんだ紙を引く感じで、
当たりは常に柳瀬さんから見て右側に来るように置きますんで」

「なるほど……」

「中山君には悪いですが、ここはそうしましょう。共謀してるってばれないようにうまくやってくださいね」

「わかった、その辺は任せろ。上手くやる。5分くらいずらして戻るか」

 

僕としてはAさんがどっちに行こうがよかったんですが
柳瀬のほうが後々なんか言ってきそう感が高いので
まあなんか会議って、面倒そうな人を味方に付けたほうが良いんで

また3人が席に着き、ある程度不毛な議論をしてもらったあと、僕が提案する

 

「じゃあ、第一希望~第三希望を紙に書きましょう。第一希望が被らなければ、その人を獲得。被った場合は、また話し合いましょう」

 

「すごくいいアイディアじゃないか!」

下手、柳瀬下手。もっとナチュラルにしてほしい

 

皆が紙を書く、結果は書くまでもないのですが、
僕「C」中山「A」柳瀬「A」となった

「んじゃ僕Cさんでいいですかね、どっちがAさん、Bさんになるか話しましょう」

「そうだな!中山!話し合おう!」

柳瀬が下手すぎて松岡修造みたいになってた

 

 

「新任の責任者と、新人の2人チームなんて聞いたことない」
「相当大変になる、仕事はしばらく2人分やることになるわけだから」
「経験ある人貰って、落ち着いて来たら新人を貰えばいいんじゃないか」
「とりあえず新人は今じゃないんじゃないかな」
「部下とエロいことする本なんか買うから邪な感情に支配されている」
「社内恋愛の責任は本当に重いんだぞ」

 

大人げなく集中砲火して、無事にミーティングも終了

ほとんど柳瀬が役に立たなかった気がするけど、
まあ、会社的にも、中山には経験者をつけたほうがいいだろう

 

と、まあ
こんなに頑張って手に入れたCさん、それが浜田だ。僕を和歌山に向かわせる事になった男だ

 

待ちに待った配属日
僕は歓迎の意味を込めて、ケーキを用意していた
部下たちもどんな人が来るんだろうとそわそわしている扉が開く ガチャリ ようこそ、我がチームへ…………んんっ?営業歴12年という頼もしい響きから、短髪のがっちりした男性を想像していたが、
なんかガリガリで茶髪でものすごく幼い顔をした挙動不審な男が来た特に挨拶とかはなく、「僕の席はどこですか」と言われた
僕がいろいろ説明してもメモすらとらない、そして同じことを聞き返される
一応渡したケーキは「今絶食してるんでいいです」と断られる
簡単な電話応対をさせてみればなんか日本語がめちゃくちゃ
人事部に新卒と同じ研修から全部やってくれと依頼した

一旦、とりあえず雑務をさせてたらFAXをお客様の携帯宛に送る
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新大阪に電車が着く
この後僕は特急くろしおっていう知らない電車に乗る
怒られるんだろうな、今日東京に帰れないかもしれないんだな
なんて考えていたら、社用携帯がメールを受信した。部下からだ

 

「浜田さんが勝手に他の人のお客さんから契約を取っちゃいました。どうすればいいですか」

 

 

 

俺も、Aさんにしておけばよかったなあ

 

 

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